静かに閉まった扉の音を聞いて、再びリュナはボウルにお湯を注ぐ。

「ちょっと熱いかな。」

指で温度を確かめて、少し冷ますことにした。

そんな様子を音で感じながらサルスは口を開く。

「見事な芝居だな、レプリカ。紅はお前をリュナと思ってるだろう。」

やや掠れた声で相変わらず目を覆ったままサルスは口にした。

彼女は口の端をあげて小さく笑う。

「国民を騙す貴方様ほどではありませんわ？殿下。」

レプリカと呼ばれたリュナそっくりな女性は笑いながらサルスの言葉に答えた。

タオルを取り少し熱が取れたお湯の中に浸してしぼる。

自分の手の水気を別のタオルで拭き取りサルスの頬に触れた。

「こんなに顔色が悪い…目の上にタオルを乗せます。お手を。」

サルスの手を下ろしてやると、レプリカはそっとぬくもりのあるタオルを瞼の上に乗せた。

タオルの熱が顔に伝わってくる。

それはサルスに対してのレプリカの優しさでもあった。