リュナを見る。

戻らない意識、濡れた頬、何度見ても鮮明に存在を主張する白いドレスの血の痕。

きっと彼らには自分に想像もつかないくらい過酷な現実が待っている。

「行くよ。」

日向の声に千羅は反応できなかった。

視線はリュナに残したまま、彼は今なんといったのだろう。

そんな千羅の気持ちを知ってか、今度は千羅の目を見てもう一度告げた。

「僕も行く。連れていってよ。」

「いいのか?」

「ここに来る時に別れは済ませてきた。それに、そこに僕の何かがあるかもしれない。」

火の力である自分以外がそこに揃っている。

もしかしたら自分もそこに居たのかもしれない。

失われた自分を取り戻せるかもしれない。

自分が一体何者なのか。

どうして記憶を失っているのか。

「光の神を助けにいこうよ。僕にはそれができる。」

「ああ。ありがとう。」