貴未を始め、何も分からずにカルサの下に集まった人たち。

亜空間から現れた黒の竜王フェスラ。

そして最近での、結界を壊し魔物を招き入れた少女。

すべてがオフカルスの皇子としてのカルサに近付いてきたのだ。

これはもう、はじまりとしか言いようがない。

確実に太古の因縁は動き出している。

「しばらく留守にする、この国を頼めるか?」

「私にできる事は限られている…この国を見えなくする事。」

ナルはあくまで穏やかに、そして静かに言葉を綴った。

不思議とそれはまるで一つの音楽のようにリュナには聞こえた。

「でもそれは反って、ここに何かがあると示すことにもなるわ。」

「それでもいい。この国を見えなくして、奴らの目から覗けなくしてくれ。全て知られるよりよっぽどマシだ。」

強い決意を持ったカルサの目、ナルは幼き日の彼と今を比べて成長ぶりをかみしめた。

何度も国の危機にこうして対峙したことがあるが、その度に思う。