誰に導かれたかは分からないがおそらく求めているものは。

「ここにいるのは我が風の主。もう長く目覚めないまま…。」

ここは聖域、よって厳重に結界は張られているのに日向は当たり前のように入ってきた。

彼は聖域が拒まない者。

「祷、貴方の主人だという事は古えに縁がある者でしょう?」

「ええ、おそらくは。」

祷は日向を見つめ、自分の中で結論を出した。

それは社も同じだ。

この深い湖の中、眠りから覚めない主人を目覚めさせれるかもしれない。

彼がそうなのか。

「火の力を統べる者よ。こちらへ。」

風の精霊・社は日向に湖の中に手を入れるように促した。

先程の痺れもあって日向は警戒するが、社は大丈夫ともう一度促す。

「…本当かな。」

また吹き飛ばされるのではないかと不安になるが、意を決して日向は水の中に手を入れた。

その瞬間、日向の手を中心に湖の水が沸騰し蒸発し始める。

「なっ…なんだ!?」

驚いてすぐに引き抜いたが日向の手を離れても尚、蒸発は止まらない。