「封印を解く鍵を見つけて、あの馬鹿を叩き起こして説教してやらなきゃ。あんた何戯けた事言ってんの?リュナはどうすんの?って。」

抱きしめる腕に力を込めたことは千羅にも分かった。

より近くに聞こえる彼女の心音に落ち着きを取り戻していけそうだ。

瑛琳も崩れそうな気持ちを必死で奮い立たせていたのだと思い知った。

「許さない。あの子が死ぬなんて許さない。鍵を見つけて必ず助けてみせるわ。文句ならその後よ。」

悔しい気持ちは瑛琳も一緒だった。

返してほしい。

彼の身体も心も幸せも。

奪われたものは絶対に奪い返す。

カルサを解放する為の鍵を見つけるのは自分たちしかいない、彼らはそれを分かっていた。

もう嘆くのは終わりにしよう。

「…一発ブン殴ってやらねえとな。あの頑固頭に。」

「…そうよ。」

互いに震える声で呟いたあとは自然と笑みがこぼれた。

涙を拭い、二人はお互いの体温を感じながら目下に広がる平和な町を眺める。