あの後。カルサとなったサルスの言葉どおりに事実はすり替えられ、誰も何も語ることはなかった。

今でもまるで夢だったかのような感覚でもある。

むしろ夢であってほしかったと願ったほどだ。

それが叶うことはないと分かっていても、気持ちが落ち着かなかった。

「まだ信じられない。」

式典が終わった後、それぞれ正装姿のままでカルサの私室に集まっていた。

長い沈黙の中、最初に声を発したのは貴未だ。

その言葉どおり皆の表情は暗い。

カルサの部屋に集まったのは貴未、聖、紅の三人だった。

贅沢なソファーが座ってくれとそこにあるのに誰も腰を下ろす事無くその場に立ち尽くす。

「紅。自分その場におったんやろ?」

情報を求めて聖が尋ねるも、紅は目を細めて首を横に振った。

「…せやけど、うちが見たんは最後の方やったみたいやからな…。」

あの出来事はすり替えられた事実に消されてしまったが、紅が話さなくても貴未や聖にはカルサがカルサでないことはすぐに見破られてしまっていた。

しかしサルスから何も告げられることはなく、災害の後始末や葬儀の準備などで慌ただしく時間は過ぎ、式典が終わって自動的に皆ここに集まってしまったのだ。