先の長引いた嵐において、シードゥルサでは国中至る所で大きな痛手を受けた。

命さえあればいい、それを合言葉に復旧が進む中で、その尊いものを亡くした者も少なからずいる。

それは天災だけでなく、とある人物によって行われた襲撃でもそうだった。

重傷者も多い。

国王の右腕として長く政治に関与し、評価が高かった秘書官サルスパペルト・ヴィッジ。

彼もまたそのことにより自室で療養をしている、ことになっている。

風神であるリュナ・ウィルサもまた同様に療養をしていたが彼女は既に国民の前に元気な姿を現した。

そして今回の嵐と襲撃により命を落とした者たちへの弔いの儀式で祈りを捧げたのだ。

彼女が目を閉じ思いを念じる、それだけで優しい風が吹いた。

カルサとして出席したサルスも彼女の風に乗せるように静かに冥福を祈る。

いつものように、強く凛々しく立ち振舞う若き王に人々は今後を委ねた。

その願いを一身に背負い彼は静かに祈り続けたのだ。

その姿を直視できない人物がいたことは、言うまでもない。