まっすぐに前を見つめる瞳には力がある。

歯を食い縛りながら、揺らぎ始めた意識の中で懸命に前を目指した。

「ここなら…っ!」

深い霧の奥にあったのは鍾乳洞だった。

さらに進むと開けた場所の中央辺りに大きな池がある、湖というほど広くはないが池と呼ぶには深すぎる場所。

霧が晴れてきて、どこからか光が差し込みこの水がどれほど澄んでいるのかがよく分かった。

どうやらこの地の主に迎えられた、そんな気持ちになりジンロの表情が少し柔らかくなる。

そして手の中にある水晶玉を見つめて震える息を吐いた。

目的地に着いて安心したのだろう、ジンロは池の淵に辿り着くなり膝から崩れ落ちて手を付いてしまった。

それでもまだ右手はしっかりと彼女を守っている。

すぐ目の前には揺らぐ水面、その底まで見えるほど澄んだ水に吸い込まれそうになった。

乱れていた気持ちも次第に落ち着きそれは呼吸にもつながる。

温かく大きな力を持った気に守られ、安心感を与えるこの地にすべてを賭けに来た。

「ここなら…見つかることもない。いつか来る時まで…この地が守ってくれる。」