「これが真実。これが皆が見た真実だ。これ以外を認めない。」

あまりの切なさにナルは目を閉じた。

嵐の後の静けさの中、低く悲しく彼の声がすりぬけてゆく。

「カルサ・トルナスの名において命じる。今私が話した、それが真実と心得よ!」

その言葉に自然と皆が膝を付き頭を下げた。

やがて怪我のなかった兵士は伝令役として大臣の下へ走り回り、それは周知の事実となった。

重傷者の続出に早くも城内から不安の声が上がる。

いつのまにか、嵐は去っていた。





「はぁ…はぁ…。」

荒い息遣いが聞こえる。

不規則な足音、どこか悪くしているのだろうか。

深い霧の中でぼんやりと影が浮かび上がる。

血まみれ姿のジンロは、片足を引きずりながらやっとの思いで歩いているようだった。

力の入らない左手と左足、しかし右手にはしっかりと水晶玉が抱えられていた。