そうか、こんな身近なところから救い守っていかなければいけないのだと思えたことは幸運だったのかもしれない。

それはこの先必ず役に立つ。

サルスはゆっくり目を閉じると長い息を吐きながら再び目を開いた。

「カルサ・トルナスの名においてこの場にいる者に命じる。」

再び皆の視線を集める。

鋭い視線はない、ここにあるのはすがるような心震える視線ばかりだった。

今からこれらを自分が守っていく。

「今ここで見た事、一切他言することは許さない。」

彼の声が痛い程強く深く身体中に響き渡る。

誰もが彼に注目し、信じられない気持ちでいっぱいだった。

時が経てば経つほどサルスは消えてカルサに変わってゆく。

もう目の前にいるのはカルサ·トルナス、彼以外に考えられなかった。

「サルスは私をかばって深い傷を負った。侵入者は私が怒りに任せて跡形もなく消し去った。リュナは衰弱が激しく私室で療養している。」

淡々と語られる新たな事実に誰も口を挟むことはない。

その言葉は本物、その言葉は揺らぐ事はない彼の真実。