「それを解いたら…貴方の行く末に光は無くなるかもしれないのよ?」

諭すような言葉でナルは語りかける、しかしサルスは微かに笑みを浮かべるだけで気持ちは変わらなかった。

「時が来た、ただそれだけの事。頼みます。」

時が来た。

その言葉はまるでこうなる事態を予測していたかのようだった。

ナルの足元に視線を落としたままサルスは動かない。

もう何を言ってもサルスの気持ちが変わることはないのだと諦めるしかなかった。

「分かりました…。」

そう言うとナルは態勢を低くしているサルスを抱きしめた。

「幸があらんことを。」

小さな声で囁くとナルは光る指先でサルスの額に触れる。

光に吸い込まれるように額に刻まれた印は消え、サルスは煙に包まれた。

姿が見えなくなったのはほんの僅かな間だけ。

その煙は惜しむ事無く大した時間もかけずあっさりと消えていく。

煙の跡に残されたのは見覚えのある姿だった。