ゆっくり近寄ってくるサルスから目が離せない。

サルスはナルの目の前まで進み、静かに前髪をかきあげた。

普段から下ろしていた前髪、彼が額を出すところを誰も見たことがない。

しかしそんな事は誰も気にしたことがなかった、その事に気付いたのは彼が前髪をかきあげた瞬間だったのだ。

彼の額には何かの印が刻まれている。

それが何か、すぐに分かったのは紅くらいだった。

「自分…それ!?」

「ナル…時がきた。封印を解いてくれ。」

そう言ってナルの前で片膝を付く。

サルスの決意に満ちた表情とは反対にナルの思いは複雑だった。

周りにいる者は理由も分からずただ黙って見ている事しかできない。

あの額に刻まれた印に一体どんな意味があるのか見当もつかなかった。

次から次へと進んでいく話に兵士たちはもう付いていく事さえできないのだ。

口を開いた人物の顔を見る、それくらいの反応が精一杯だった。