そんな彼に誰も声をかけることができなかった。

まず自分自身の動揺が止まらない。

今ここで何が起こったか、自分の目が全く信じられないでいるのだ。

それはナルも例外ではなかった。

しかしいつまでもそうは言ってはいられない。

「怪我をしていない者はいるか?」

相変わらず顔は手で隠れいるものの、いつもの調子の声でサルスは皆に呼びかけた。

あまりにも自然な口振りで兵士は素直にその言葉に答えを返す。

「自分は怪我はありません。」

「自分もまだ動けます。」

「二人動けるか。よし…ナル。」

動ける兵士の状態を確認し、ナルを呼んだ時にはサルスはもういつもの状態に戻っていた。

いや、いつもより毅然とした態度と言った方がいいのかもしれない。

その姿に少なからず彼の覚悟を感じて周りは息を飲んだ。

「サルス…。」

サルスの態度や自分に向けられる目を見てナルは彼の考えていることが分かった。