やがて風と光が治まり、サルスが目を開けた時には誰の姿もなかった。

ヴィアルアイも、玲蘭華、ジンロ、ロワーヌ、さっきまで自分たちの周りに結界を張り守ってくれていた瑛琳も、千羅もカルサもリュナも、誰の姿もなかった。

瓦礫が散らばり傷だらけの玉座の間に一体何が起こったのか訳が分からない。

立ち上がり足を進めてみても答えが出る訳ではなかった。

傷ついた兵士、焼かれた王の椅子、壊された入り口、立ちこめる濁った空気、血で汚された床。

数十分前の姿が見る影もない。

ここは王の権威を表す場所だった、その場で一体何が起こった。

考えると浮かぶカルサの姿にサルスは口を覆う。

嵐だ、嵐が起こったのだ。

「サルス。」

呼ばれた方向を見ると、紅に支えられながら歩み寄るナルの姿があった。

怪我をしている様子はないが、その表情はあまりにも悲しく険しい。

彼女は自分と同じ様にこの惨劇を見ていたのかとサルスの心が震えた。

「ナル…カルサが…っ！一体、何があったんだ！？何がどうなってるんだよ！！！」

サルスの悲痛の叫びはどこまでも響き渡った。