瑛琳がサルスとそんな会話をする中、背中に強い痛みを覚えながらも千羅は速度を緩める事無く一歩一歩前に進んで行く。

近付くにつれ鮮明に映るカルサの姿に涙を堪えた。

深く付けられた自分の傷よりもよっぽど痛い。

身体の真ん中に突き刺された剣、とてもじゃないが息をしているようには見えない。

やっとカルサに触れられる位置までの所にやってきた時でもまだ信じられなかった。

「何で…こんなことに。」

胸の内に留めることのできなかった言葉が千羅からこぼれる。

そして吸い込まれるように恐る恐るだが手を伸ばしてみた。

「その剣に触れては駄目よ！！」

玲蘭華の叫び声が千羅の動きを止めた。

彼だけじゃない、その場にいる者全てが玲蘭華の声に束縛されてしまったようだ。

「その剣は封縛、資格を持つ者でしか解く事はできない。《鍵》以外は触れないで！」

玲蘭華の言葉に返事をすることもなく、千羅は強く拳を握った。

そして片手でカルサに触れ一瞬で彼を連れて姿を消す。

その瞬間をサルスは見逃さなかった。