なのにカルサの力の気配を感じない、ということは。

「くそっ!」

居ても立ってもいられない気持ちに千羅は結界を素手で殴り付けた。

知りたかった中の状態を知って良かったどころか、焦りだけが募って暴走しそうだ。

それは千羅だけではなく瑛琳も同じだった。

「千羅、機会は必ず訪れる。その一瞬を逃さずに突き進みなさい。今の私に解るのはそれだけだわ。」

ナルの言葉に千羅と瑛琳は顔を上げる、そして自ら平常心を取り戻し力強く頷いた。

口を閉じて意識を結界の向こう側に集中する。

一瞬たりとも気を緩めてはいけない。

突破口が必ず開かれる、二人はジンロを信じてその時を待つしかなかった。

「うちには状況がサッパリ理解でけへんけど…ナルさえ守っとればええんやね?」

千羅と瑛琳の邪魔をしないように紅がナルの耳元で尋ねた。

その心遣いにナルは彼女の優しさを感じて微笑む、それはいつぶりかの気持ちを緩めた瞬間だった。

「ええ。ありがとう、紅。」

ナルに微笑み紅は千羅と瑛琳、二人の行動に意識を向けた。