勢いのある水しぶきと共に人影が入り口付近に現れ、その人物を確認した千羅は全身の血が沸き上がる感覚を味わう。

「…っヴィアルアイ!!!」

千羅は思わず結界に張り付いて叫んだ。

玲蘭華の攻撃によって入り口付近まで飛ばされたヴィアルアイ、その姿にその場にいた者全てが注目していた。

遠目でも印象付けるあの燃えるような赤い瞳。

「千羅、今の魔法!」

「玲蘭華…っ!」

彼が受けた水の魔法の使い手を千羅も瑛琳も察しがついた。

力の強い者だけが入ることのできる結界の中に役者が揃っている、嫌な予感がする。

『頭の中で警戒音が鳴るんだ。』

「カルサ…っ!」

あの時カルサが言っていた警戒音の意味をもっと深く慎重に読み取っていれば、この最悪の事態を免れたかもしれない。

後悔だけがどうしようもなく押し寄せてくるのを歯を食いしばって耐えるしかないのか。

確実に事態は最悪な方向へと進んでいる気がした。

玲蘭華がいて、あのカルサがおとなしくこの場を任せる訳がない。