異変を感じ城に戻ってきてからずっとこの場で立往生している。

一瞬現れたジンロには何とか突破口を作る、ナルを連れて来いとだけ言われていた。

この中に自分は入れない。

あからさまに見せつけられた力の差に悔しさと不甲斐なさと、なにより最悪なことしか考えられない心の弱さに苛々してしまう。

「皇子…っ!カルサッ!」

間違いなくカルサはこの中にいる。

どれだけ気持ちが荒れても諦めることは絶対にしない、全てはそこに繋がっているのだ。

気を持ち直し、もう一度剣で結界を壊そうと構えた。

「はあっ!!!」

もどかしい気持ちを力に変えてひたすら結界にぶつける。

「千羅!」

後ろから瑛琳の声がして千羅は動きを止めた。

結界に包んだナルを瑛琳の水の魔法で浮かせ運んできたらしい。

傍には紅の姿があった。

「千羅、ナル様を連れてきたわ!そっちは!?」

「駄目だ。占者ナル、何か解りますか?」

辿り着くのが待ちきれず千羅からナルへ近付く。