近くで何かあった時の為に傍にラファルが待機していることなんて彼らは知る筈もなかった。

サルスたちが客観的に見て、どうも味方と予想される側が圧されている気がする。

その予想は当たり、今の状況の不利さに玲蘭華とジンロは焦っていた。

何とかしてカルサとリュナをここから避難させなければ全てが終わってしまう。

打開策を見付けようと玲蘭華がジンロに声をかけた時だった。

「ジンロ…ああっ！」

急に気配に気付き後ろを振り返った瞬間、玲蘭華は手首を捕まれ力強く上へと引っ張られた。

腕の痛みに思わず悲鳴がでる。

「久方の再会だというのに随分な挨拶だな、玲蘭華。」

「ヴィアル…ッ！」

水に濡れた髪をかきあげながら微笑む瞳はどこまでも冷たい赤色だった。

その目いっぱいに彼を映した玲蘭華の鼓動が速くなる。

何とかしなければいけない、早くこの二人を何とかしなければいけない。

逸る気持ちだけが進行していく悪循環に嵌りそうだ。

何とかしてここを突破しなければ、外にいる彼らへの道を作るのは自分しかいないのだ。