何度も何度も彼の名を叫び、必死にもがいて逃げ出そうとしていた。

涙が溢れる彼女の瞳にはカルサの姿しか映っていない。

「まさか!」

何かに気付いたジンロはヴィアルアイを見る。

彼の手には片手でなんとか持てる程の大きさの水晶玉が光っていた。

「玉の封印!?くそっ…させるか!!」

走り出したのも束の間。

「カルサッカルサッ!!いやああっ!カルサーッ!!」

急ぎリュナの許に駆け出すジンロを嘲笑うかのように、悲鳴ごと彼女はヴィアルアイの手の中にある水晶玉に吸い込まれてしまった。

「ヴィアルアイ!」

行き場を失った足が力を堪えてゆっくりと地に落ち着く、憤りと焦りがジンロの声を低く強くした。

抑えきれない怒りが拳を震わせ向かうべき場所を定める。

「最高の屈辱を味わうがいい。その男と共にな!」

「彼女をどうするつもりだ!!」

ヴィアルアイは口角を上げ、リュナが取り込まれた水晶玉をジンロに向けて差し出した。