救護用品を持った女官に兵士を預けて貴未は走り出す。

カルサはその姿を見つめたまま腰を下ろした。

「何だってこんな時に。」

サルスも動揺が隠せなかった。

この非常事態に重なる異常事態、一体どこの誰がこんな日にしかけてくるんだ。

怒りと焦りが混同して理性が働かない。

「やばいな。」

「ああ、やばいよ。緊急事態だ!嵐の次は侵入者!!これから…。」

「ナータックの命が危ない。」

カルサの言葉にサルスはもちろん、そこにいる者すべてが息を飲んだ。

カルサの握り拳が震えている。

先程の兵士の深い傷とナータックでないと手に負えないという言葉からはかなりの強者ということが分かる。

だが、カルサの言葉の本当の意味に気付いたのはリュナだけだった。

「あの爆発音…ですか?」

「この状況で爆発音が発生した場所はそこ以外考えられない。ナータックの身に何かあったかもしれない。」

部屋の空気は一気に凍り付いた。