カルサの目が僅かに大きく開いて反応したことをナータックは見逃さなかった。

「雷神と称される陛下とて万能ではない。あの方は神ではない、一人の人間なのだ。どれ程に万能であれば良かったと陛下自身思っていらっしゃる筈か。出来ぬものは出来ぬ、だからこそ今やれることを全てやるのだ。」

「…何の為の雷神なんだよ。」

思わず心の中で呟いたことが口に出てしまった。

「それは自分で決めろ。どれだけ叶えてほしい願いがあっても神は全てを聞いてはくれない。それは私たちが一番よく知っているだろう?」

真剣な表情。不安から生み出した民達の心の乱れは、まだ若い国王を支える大臣の言葉によって解決された。

欲しかった答えじゃなかった、言われるであろう言葉ではなかった。

予想外の答えに、トン、と胸を小突かれ気持ちが真っ白になったようだ。

数分前とは一転し静まり返ったその空間は、少しずつ穏やかさを取り戻していく。

その様子を見届けると、ハワードは最初に主張した男に近寄り肩を叩いた。

「皆の声を聞かせてくれてありがとう。誰かが切り出さねば、皆、不安な思いを吐くことができなかった。感謝する。」

「私は…。」