そしてそれはカルサの視線の先にいるハワード老大臣も同じだった。

彼もまたカルサと同じ様に口を閉ざしたまま視線だけで周りの様子を捉えている。

次第に不満の声はカルサ自身への言葉に変わり、まだ若い子供の王に任せられない、若く経験もあまりないから頼りないと非難するものとなっていった。

飾りだけの国王なら居なくてもいい、まるで全てを知った上で口にしているような言葉にナータックの表情も歪んでいく。

どこから出たのか国王であるカルサは飾りだけで実質国の舵取りをしているのは大臣たちなのだろうという声も上がっていた。

噂なんて全くのデタラメだと分かっていても今この場でそれを口にされると分が悪くなる。

口を開くなと言われた以上、カルサの非難という嵐が目の前で巻き起こっているのを黙って見ているしか出来なかった。

下の方で握りしめられている拳が震えている。

その場にいた女官たちも聞いていられず目を逸らして俯いている者も少なくなかった。

我が国の王が我が国の民によって蔑まれている、ここまで民を思う王を民は非難ばかりする。

ハワードはいつまでも沈黙を守るかと思われたが、いくつか放たれた言葉の一つに強い反応を示した。