「だいたい、この国の王は雷神なんだろう?そんな凄い力を持ってるんなら、この嵐を止めればいいだけじゃないか!」

男が放った言葉は大きく部屋中に響いた。

それは部屋の端である入り口付近に立っているカルサの耳にも痛いくらいに届いている。

ナータックは視線だけでカルサの様子を確認したが、彼は目を細めるだけで何も動こうとはしなかった。

男の発言はこの嵐に不安を抱えている人たちの心に深く入り込む。

やがて、そうだそうだと小さく囁く同意の声は人数を増すに比例して大きくなっていった。

「そうだ!なんとかしてくれよ!」

「雷神なんだろう?」

「それで済む話じゃないか!」

矛先を一つに決めた人々の叫びは大きな力となって部屋の大気を揺らす。

次々とカルサに降り掛かる言葉はあまりに多すぎて埋もれてしまいそうな程だった。

部屋にいた過半数の人間がなんとかしろと叫び続ける、怒りに似た訴えは耳だけでなく心にも痛いものだった。

カルサは黙ったまま目だけで辺りを見回す。

焦っているのか、困惑しているのか、全く変えない表情からは彼が何を思っているのか分からなかった。