ゆっくりと静かに、じりじりと刄が首元に近付く感じに似ている。

「駄目だ。それはお前のするべきことじゃない。」

いつになく強く諭すような千羅の声に、振り向けないが背中に感じる二人の強い視線は自分の判断の間違いを指摘されているようだ。

しかしカルサにだって譲れない思いもある。

「ここは俺の国だ。御劔は関係ない。」

「なら尚更、雷神の力を使うのはおかしいだろう。」

確かにそうだ、千羅の言うことは間違っていない、しかし。

「俺は我儘なんだ。」

耳を澄ませば聞こえてくる自分を呼ぶ声、それは常に自分がこの国の王であるということを思い出させるものだった。

カルサの身体に摺り寄せてラファルが自分の存在を知らせる。

いつの間にか瑛琳が連れてきていたのだ、彼もまた悲しそうな眼差しをカルサに向けてきた。

言いたいことは千羅たちと同じらしい。

しかしほんの少し、リュナが作ってくれた風のない時間に余裕を持たせてやりたいのだ。

嵐の中で働く兵士たちを、降りやまない雨に怯える民たちを、避難してくる民たちを、カルサが無理をすることで救えるのならやってやりたい。