この中で懸命に働いている兵や、怯え苦しんでいる民が沢山いるのだ。

扉を開けたことでリュナの髪もマントも風にさらわれそうになるくらい大きく暴れだした。

しっかりと歩いて行かないと飛ばされかねない。

リュナは短く息を吐いて気合を入れると途中まである屋根をぬけて、雨にうたれながらバルコニーの果ての手摺りまで進んでいった。

頭から被っていたマントが風で脱げそうになるのを手で押さえる。

しかし一歩出ただけでその意味をなさなくなったマントにリュナは心の中で苦笑いをした。

もう既にずぶ濡れだ、結局意味のない鎧をまとっただけの自分に後悔するがそれも仕方ない。

雨に濡れ、水を含んで重たくなった髪も容赦なく宙に舞わせる。

荒れ狂う風を感じながら、リュナは目を細めて空を見上げた。

身体中に降り注ぐ雨が痛い。

「答えてくれるかしら。」

胸の内に留めておくことが出来なかった言葉がリュナの口から漏れる。

暗く分厚い雲はまだまだ雨を止めてくれそうになかった。

身体にまとわりついて動きにくい服の中から風玉を取り出して掲げる。