だから二人は故郷に帰ることを拒んでここに留まったのかと納得せざるを得なかった。

その絞り出したような低い声は故郷への未練を感じさせない。

少なくともこの瞬間、カルサにはそう感じさせた。

雨が降り続ける景色は古い記憶を呼び起こすのだ。

それは残念ながらカルサも聖もいい思い出ではないらしい。

人を情緒不安定にさせ、そのことが予感を強める。

嫌な予感が、身体中に絡まっていくようだ。

被害が少ないといい、その思いは届かないかもしれない。

止むことのない雨はシードゥルサ全体に不安や恐怖、そして孤独な気持ちも含めて降り注いでいた。

それほど強い雨でないのが幸いか、しかし小雨が続くこの日々は何かが忍び寄ってきているような気がしてならない。

不安と恐怖と、それらは確実に人々を陥れているようだ。

「行くわ。」

ここでこうしていても仕方がない。

聖はカルサに向き合って強い眼差しを送った。

「頼む。」

短いが確かな思い。

カルサの言葉に敬礼をすると、聖は何も言わずに会議室から出ていった。