そのカルサを聖は黙って見つめる。

大勢で賑わっていたこの会議室も今は人の気配は二つしかない。

カルサと共に最後に残ったのは直轄部隊の隊長である聖だった。

上座より遠く離れた席で自分にくるだろう命を待つ。

だが二人だけになってもカルサは聖に命じる気配はなかった。

窓の外で降り続ける雨の音が響く、さっきよりも雨足が強くなっていることを告げているようだった。

ゆっくりと目を閉じて雨の音に耳を傾けるとそれはより身近に感じることが出来る。

やがて資料に向けられていたカルサの視線が聖に向けられた。

その目に答えるように聖も目を合わせる。

「お前たちを信頼して任を与える。」

カルサの声がいつもより低く、そして大きく聖の胸を打った。

何を命じられるかだいたいの予想を付けて聖は背筋を伸ばし姿勢を正す。

「特殊部隊長、聖・黒大寺。城内にて待機し、緊急出動の命を待て。」

瞬きすることでそれに答えた。