「…雨が降るわ。」

風の匂いで分かる、リュナがそう告げた数分後には小雨が城下に降り注いだ。

「あかんあかん、急いで帰らな!」

冷たい雨は体温を一気に奪ってしまう。

明日も早朝から訓練が待っているのだ、小雨とはいえすぐ止みそうにない雨に慌てて城へ向かった。

「酒回る~。」

「うえ~。」

「吐くんなら自室で吐け!」

一番酒を飲んでいた聖はなんでもなさそうに部下に怒鳴り走り出した。

「隊長!待ってください!」

それを追うように一同が続いて走り出す。

「帰ったらレプリカに怒られそうか?」

楽しそうに笑いながら貴未がリュナの横で尋ねてきた。

きっとそうなら面白いという気持ちがあるのだろう。

「…びしょ濡れならね。」

そうでなくても十中八九あの落ち着いた口調で何か言われるに違いない。

城に帰った後のお叱りを想像しながらリュナは走ることにした。

そういえば直轄部隊ほぼ全員が城を留守にしているなんて許されるのだろうかと頭の中で疑問に思う。

案の定サルスパペルト秘書官からの長いお叱りがあったことは言うまでもない。