だって国中が王妃と後継ぎを心待ちにしている。

以前は目の前の書類のように山盛りの見合い写真が来ていたが、今は専ら風神圧しの声が多い。

相変わらず嫌そうな顔をしているが、まんざらでもなくなってきているのではないかとナータックは読んでいた。

「言っただろう、妃はめとらないと。」

しかし返ってくる言葉は冷たい。

いい加減にしつこいと言葉を変えて怒られているようだ。

ナータックはカルサの様子を眺めていた。

この人はいずれこの国からいなくなる。

いつかカルサの別の側近である千羅から聞いた話が頭を過った。

この絶対的な国の柱を失ったらどうなってしまうのだろう。

「サルスパペルト殿下に期待、ですかね。」

なんとなく空気を変えたくて口にしてみた。

「そうしてくれ。」

どうやら意外な言葉だったようでカルサが楽しそうに笑った。

内心ざまあみろとでも思っているのだろうな、カルサが笑顔で仕事をするのは珍しいことだ。