今までの人生の中で何よりも至福の時だった。

そっと頬に触れてみる。

規則正しい寝息をたてたまま、カルサは動かなかった。

リュナは愛しさから笑顔になる。

もう一度触れてみようとした、その瞬間動きが止まる。

ふと気配を感じ、リュナはそっとカルサの腕の中から抜け出してベッドから降りた。

起こしていないか確かめようとカルサの表情を確認する。

完全に力を抜いて眠れているようだ。

その姿が嬉しくて微笑むとリュナはそのまま部屋から出ていった。

廊下に出て辺りを見回すと遠くで階段を降りようとしているジンロを見つける。

「ジンロ様!」

リュナは思わず呼び止めた。

ジンロは立ち止まると振り向いて笑みをこぼす。

目で呼ばれたように感じ、リュナは歩き出した彼の背中を追って走り出した。

「そういや、リュナとはあまり話をしていないな。」

中庭の大きな噴水の前を歩いている時に後ろを振り返ってジンロはリュナに話かけた。