執務室にはさっきと違う空気が流れている。

心地よい風が部屋の中に入り、室内の空気を洗うようだった。

ナータックがさっき感じたような懐かしい暖かさはないが、これもまた慣れ親しんだ空間だ。

「親はどうしている?」

「はい?」

不意をついた問いにナータックは頭がついていかなかった。

「お前の親だ。」

「あ、はい。元気にしていると思います。」

「何故分かる?」

カルサの追及にナータックは言葉をつまらせた。

故郷に帰ってもいない、便りも出していない、もう長い間音信不通になっていることくらいカルサにはお見通しだったようだ。

それにはもう苦笑いをするしかない。

「便りが無いから、ですかね。」

誤魔化す訳ではなく、ハッキリと答えた。

ナータックの自信はカルサにも伝わった、しかし納得はしていないようだ。

彼の表情がそう訴えている。