今までずっと悲しい運命の為に生きようとしないカルサが、初めて生きていく事を考え始めた。

それは諦めきれずにいた奇跡。

カルサの思いを変えて共に生きていく事を望んだ女性がいる、こんなに嬉しいことはない。

ただ今は嬉しいよりも涙がこぼれて止まらなかった。

安堵と達成感と、解放感と、どの言葉を当てはめていいか分からないが、心が温かいのは確かだ。

ただ笑いたくても次から次へと溢れ出てくる涙に邪魔されてそれが出来ない。

ぼろぼろの感情がむき出しになった千羅はまるで子供のようだ。

そんな彼が愛しくてたまらず、ジンロは千羅の頭をぽんぽんと叩いた。

「良かったな…カルサ。あの二人なら大丈夫だ。」

千羅は頷く。

まるで自分の事のように、いや、それ以上に感動していた。

拭っても拭っても涙は止まらない。

「お前みたいな奴がカルサの傍に居てくれて良かった…ありがとうな、千羅。」

千羅は何の反応も示さなかった。