拒否や抵抗はされない、それが分かると安心して顔がほころんだ。

「本来なら…こうして触れることも、話すことも、目を合わせることも。…視界にだって入れて貰える訳がないくらい遠い人なんです。」

それはずっとリュナが感じていたこと。

国王であるカルサは一般民からすれば遠い人物だった。

雲の上の人、同じ人間であることを忘れてしまうくらいに尊い人だったのだ。

彼だって怒るのだ、笑うのだ、満たされないことだって沢山あるだろう。

「いいじゃないですか、私たちは弱い…所詮は人なんですから。我慢できなくたって、我が儘を言ったって許されます。」

リュナの両肩を掴んでいた手から力が抜けて、そのままするりと重力に従っていく。

カルサの頬にはまだ新しい涙のあとがあった。

「なんて…私は我が儘でしょうか?」

苦笑いしながら頭を掻く、そんなリュナにカルサは瞬きを繰り返したあと微笑んだ。

そして首を小さく横に振る。

「いや…いいんじゃないか?」

目の前でカルサが笑っている。