どこかで準備をしている自分に腹も立つ、彼女が自分に気があるのを利用して何が出来ると考える自分もいる。

卑怯で冷酷な人間だと、自分自身が一番よく知っていた。

そして、彼女に惹かれていく自分がどれだけ弱い人間なのかも。

「私は卑怯です。」

震える声がリュナの口からこぼれた。

「貴方の役に立ちたいと訴え続けていたのに…逃げようとして。」

「違う、卑怯なのは俺の方だ。リュナの気持ちを知った上で利用していた。」

切羽詰まった声はカルサにしては珍しく早口で伝えようと響く。

本当に卑怯な人間ならこれも全て演技だろう、しかしリュナにはそうは見えなかった。

むしろ彼の必死な、真正面から向き合おうとする気持ちがよく分かって嬉しくなる。

「…だったら、私たちは卑怯者同士ということですね。」

そう言って笑うとリュナは抱えていた胸元から剣を離し二人の間に立てた。

リュナが何をするか分からなかったカルサはまだ柄を握ったまま、その行動を見守る。