頼むからそんなことを言わないでくれと、言葉に出さなくても表情や雰囲気でジンロの思いはカルサに伝わっていた。

「シードゥルサは俺の今だ。あそこに俺の未来はない。あの国の未来に俺は存在していない。」

「カルサ…。」

「俺にあるのは過去と過去に捕らわれた今と、死後。これだけだ。」

ジンロの耳から、音が消えた。

彼の口が何かを呟いたのか小さく動く、しかし声は聞こえなかった。

カルサの発言に言葉を失ったのだ。

しかしカルサの様子からして当たり前のことをそのまま口にしたような、特別何の変化も見られない。

分かっている、自分の運命も使命も行く末も。覚悟なんて今更いらない、自分で受け入れ選んだ生き方だった。

分かっている、そんなカルサを救おうと千羅と瑛琳が動いている事。カルサに何も知らせずに色々動き、道を開こうとしている事も、気を遣っている事も、大切に思ってくれていることも。

分かっている、ジンロに何の否も無いことくらい。全てはカルサを守る為、守れるもの全てを救う為にここにいる事くらい分かっている。

でも仕方ないのだ。