分かっていても千羅は心配せずにはいられなかった。

しかし口にするには躊躇われる、手にしていた瓶が自分を使えと言っているように見えた。

「俺には…この酒は甘いようだ。次を取りに行くけどカルサはどうする?」

「そうだな、俺も。」

そう答えながら振り返り言葉をつまらせた。

視界の端にリュナの姿が映る。

見回しているところから、何かを探しているようだった。

そして彼女がバルコニーに目を向けると捜し物が見つかったように笑う。

リュナの行動の一部始終を見ていたカルサたちは、リュナのその表情を見逃さなかった。

「カルサ!」

弾けるような笑顔、それは凄く眩しいもので、その目に映しているのは他でもない自分であるとカルサは気付いた。

手を振りながら小走りで駈けてくるリュナを二人が見つめている。

「カルサ!」

部屋二つ分程の広さがあるバルコニーでは、リュナが辿り着くまで時間がかかった。