持っていた瓶に口をつけて酒を喉に流し込む。

その姿は下町にいる普通の若者のように見えた。

千羅のこの言葉遣いを聞くのは随分と久しぶりで懐かしく思える。

「それとも何か?俺は影に徹しろと?」

「そんなこと言うか。好きにしたら良いと思ってる。お前も英琳も、サルスも。」

そう言ってカルサもグラスに口をつけた。

懐かしい味がする、しかしその気持ちには気付かないフリをしてカルサは目の前に広がる景色を眺めた。

美しい緑溢れる光の国。

「さっきリュナに凄い事言われたよ。」

バルコニーの手摺りに身体を預けカルサは笑った。

カルサの横に並ぶように、千羅は景色を背にして手摺に身体を預ける。

「へぇ…どんな?」

カルサがこんな言い回しをするのは珍しい。

しかも気のせいか穏やかな顔をしているように見えた。

敬語の抜けた千羅と並んで肩の力が入らない会話をしている、それだけでも可笑しな話なのにとカルサは一人で笑った。