彼の後ろ姿をちらりと見つめ、カルサはその場から離れて人混みをかきわける。

「カルサ!」

動き出して間もなくカルサを呼び止める声がした。

聞き覚えのある声だけに目を見開いて足を止める。

「千羅。」

カルサの視線の先に手を挙げて立つ千羅を見付けた。

珍しく千羅が姿を表し、しかもカルサの名を呼んでいる。

その時カルサは沙更陣が見せた去り際の表情の意味に気が付いた。

どうやらカルサの背後で地神・千羅が睨みをきかせていた事が理由のようだ。

「あっちへ行かないか?」

親指を立てて後方を指す、カルサは物言わず頷いて彼の後に続いた。

千羅はカルサを会場に面した広いバルコニーに連れ出したかったらしい。

天気もよく、開放的で過ごしやすい場所だというのに意外と誰もいない。

まるで二人の為に用意されたようだ。

「どうした?珍しいな。」

「パーティーだし、少しくらい楽しんでもいいでしょ。」