どちらか一人が必ず護衛につく、御劔の当主は常に命を狙われていてもおかしくはないのだ。

「今はジンロがついているよ。」

何を気にしているのか分かった沙更陣は背けていたカルサの顔を自分の方に向けさせた。

相変わらず優しい笑みを絶やさない沙更陣、その顔を前にしてもカルサは無表情だった。

作り笑いも部分的にしか使わないようだ。

温度の低いカルサの振る舞いに沙更陣の目に悲しみが表れる。

「ジンロの方が良かったかな?私は彼女…ロワーヌの…。」

「何を仰るのですか。沙更陣様と話せるだけでとても光栄です。」

カルサは笑顔で沙更陣の言葉を遮った。

さっきまでとは違う完全に外向けの笑顔、あからさまな感情の示し方は露骨だ。

それには思わず沙更陣も苦笑いしてしまった。

「会えて嬉しかったよ、どうか楽しんでいってくれ。」

これ以上話すことはないと態度で示され、諦めた沙更陣は去っていった。

最後の言葉を発する前の微妙な表情が気にならなかった訳ではない。

しかし去り行く沙更陣を呼び止める気がカルサには起きなかった。