宮殿はさっきまでと違って、大勢の人間が集まっていた。

賑やかな雰囲気、風神と雷神を迎える為に催されるセレモニーの準備は着々と進んでいるようだ。

どうやら御劔ではない、この国の住人は宮殿内で働いているらしい。

そんな忙しく働く彼らの様子を千羅は遠くから眺めていた。

「千羅。」

木の上で会場を観察している千羅を見つけてジンロが呼ぶ。

千羅はその場から降りようとせず、視線だけを彼に向けた。

「彼らがさっき言っていた住人だ。」

「そのようですね。」

ジンロには千羅が何を見て何を思ったかが分かっているらしい。

再び働く人々に視線を向けて千羅は素っ気なく答えた。

視界に入る彼らはいそいそと自分の仕事をこなしていく。

楽しそうに見えるのは祭りだからだろうかと千羅は目を凝らした。

「こうして見ると懐かしく思えるんだけどな。カルサはどうした?」

ジンロの言葉に千羅は一呼吸置いた。

「一人になりたいと。」