やがて後ろから、ゆっくりと歩いてきたジンロが呟いた。

その石板の主、それは。

「最高神官ウレイ…。」

静かな時が流れ、暫くは誰も動けなかった。

それぞれに思うところがあり、その思いに囲まれてしまったのだ。

風が吹き抜ける。

カルサの手は石板に置かれたまま、離れることはなかった。

「ごめん…。」

消えそうな声を出したのはカルサ。

「ごめん…ウレイ。」

石板の上に置かれた手が拳を握り、その上にカルサは額を打ち付ける。

突然の行動に止めようと千羅は反射的に身体が動いたが、一歩踏み出しそうになっただけに止まった。

石板の上に滴が落ちているのが見える。

「ごめんな…っ。」

囁くような叫び声はどんな大きな声よりも耳に響き胸を衝いた。

今のカルサに触れると簡単に崩れてしまいそうで怖い。

ラファルでさえも身体を擦り寄せようとはせずに見守っていた。

かける言葉も見付からないまま、誰もがカルサの傍にいるだけで何も出来ずに耐えている。

この石板への思いを、カルサの謝罪の理由は分からなくとも、その胸にあるのは苦痛だけだと知っていたから。