下を見て立ち尽くしていたかと思えば、ゆっくりと屈む。

手を石板に伸ばし、壊れ物に触れるかの様に撫でるその手は微かに震えていた。

今にも泣きそうな表情、ラファルは座ったままカルサの傍にいた。

カルサの身体がさらに石板に近付くように縮まる。

彼の異変を察知した千羅はジンロを残し、急いでカルサに駆け寄った。

ジンロもゆっくりと歩き始める。

「どうしました?!」

屈んで俯いたカルサを覗き込むように千羅は声をかけた。

千羅の存在を分かっていてもカルサの瞳は石板の文字から離れない。

深く、深く、その名を目に胸に魂に刻んだ。

千羅も石板の主を確認し心の中で呟く。

なんとなく声に出してはいけない気がしたその名には覚えがある。

「そういう事か…。」

消えそうな声で絞り出すようにカルサは呟いた。

ただ千羅は息を飲んで見つめることしか出来ない。

まさか。そんな言葉が頭の中を何度も過る。