「貴方の立場は我々からすれば決して良いものではない筈ですよ。」

「そうだよな。」

ジンロはため息を吐きながら頭を掻く。

落ち込む訳ではないが分かっていてももどかしい。

「フェスラの件、あれは明らかに目覚めだった。しかしあれ以降、まったく動きがない。」

二人の間に緊張が走った。

ジンロは千羅の反応を待たず話を続ける。

「カルサに伝えてくれ、俺はお前一人にやらせる気はないと。」

ジンロの目はまっすぐ千羅に向けられた。

「伝言ですか。」

二人の視線は交わったまま、少しの間の沈黙を風がさらっていく。

「貴方の真意は何です?」

「真意?」

驚いたように目を大きく開いてジンロの声は弾んだ。

それはまるでからかうような態度で千羅は眉をひそめる。

言葉にして答える気がないことは十分に伝わった。

ジンロの大人びた笑みが千羅の気持ちを冷ましていく。