樹の鼓動か自分のものか。規則的な音に浸り暫く身を任せていると、遠くで小さな音が聞こえた。

それはおそらく鳴き声。

カルサはゆっくりと目を開き、音がしたであろう後ろの方に身体を向けた。

振り向いた瞬間に目に入ったのは、黄金の毛並みを持つ狼のような獣。

獣は吠えもせず静かに立ち、真っすぐにカルサを見つめている。

不思議に思い目を細めてカルサは考えてみた。

襲って来るような気配はない。

ここは御劔の総本山、何か関わりのあるものだろうか。

しかしカルサには一つの可能性が浮かんでいた。

まさか、そう思いながらも口を開く。

「ラファル?」

半信半疑で問いかけてみる。

獣はふさふさのシッポを振ってみせ、その反応にカルサは確信した。

「やっぱり、ラファルか!」

喜びの声をあげ、カルサは両手を広げた。

ラファルは迷わずに飛び込んでいく。