紙を見ながら困ったようにしている。

道がわかんないのか。

「どちらに向かうんですか?」

あたしは声をかけた。

彼はびっくりしたようにあたしを見ている。

「あっ…えと。この住所なんですけど」

彼は紙を見せながら言った。

うちの近くじゃん。

「ここ、うちん家の近くなので一緒に行きます?」

「ありがとうございます!!」

満面の笑みを向けてお礼を言ってくれた。

すごく優しそうな人。

あたしもこんな人になりたかった。