「助けて……助けてくれ!!」

闇に呑まれながら、必死に手を伸ばす。
その様子を呆然と見ていたロイだったが、次の瞬間、彼はキースの腕から逃れグランド公へ駆け寄った。

「ロイ!!危ない!!」

イヴが叫ぶ。
それでもロイは止まらない。
彼はグランド公へ手を伸ばした。

「確かに僕らは、裏切られたのかもしれない。でも、やっぱり……」

『とんだ偽善者ね』

影の"手"がロイを撥ね飛ばす。
彼は尻餅をつき、顔を歪めた。

グランド公の叫びも虚しく、彼は闇に呑まれていった。
助けを求めるように伸ばされた手も、すっかり無くなってしまった。

最後に残ったのは、彼が付けていた仮面だけ。
剣もマントも、全て呑み込んでしまったらしい。

それで満足したのか、広間を包んでいた闇は波が引くように消えていった。

『後はよろしくね……』

と言う少女の声と共に。