目の前の惨事なんて見たくない。
音だって聞きたくない。耳を塞ぎたい。
しかし、拘束されている以上、その動作をすることは出来なかった。

イヴは項垂れ、目を閉じるだけ。

生きたい。
けれど、この争いを止めさせられるなら、わたしは死んでも構わない。

『結局のところ、どんなに頑張っても無駄なのね』

イヴの耳に、少女の声が届く。
その瞬間、彼女の周りの音が全て消えた。

『人間って無様だね。どうして人の意見に耳を貸さないんだろう?』

「昔からの慣習だから……こればかりは……」

声が掠れる。
力が出ない。
頭も働かない。

そんな彼女に向かって、"声"は小さく笑った。