「やはり、悪魔の子の兄は躊躇いがないのかな」

キースの動きが止まる。
その隙を狙って、男が攻撃を入れてくる。

わざと、キースを煽るような言葉を吐く。
そうして彼は、徐々に優勢になってきている気がしていた。

「君がこんな様だから、妹さんはさぞかし酷いんだろうね」

「……」

何も答えない。
言い返さないことをいいことに、男は次々と罵詈雑言を浴びせる。

次の瞬間、キースは男の剣を弾き返した。
そして、男の鼻先に鋒を突き付ける。
突然の事で男はよろめき、自分のマントに足を引っ掛け、そのまま仰向けに倒れた。

「別に、私自身は罵られても構いません。ただ……」

倒れた男にゆっくりと歩み寄り、剣を彼の右頬すれすれの床に突き立てた。

「!!」

男の身体が恐怖で硬直する。
そして、ゆっくりとキースの方へ目を動かした。

キースは無表情だった。
しかし目は、男を見下すような、軽蔑の色を帯びている。

「ただ……妹を侮辱する奴は許せない」

底冷えするような低い声。
反論することも許されない、鋭い眼差し。
男は身体の力を抜き、ぐったりとした。