ロイを背に、キースはまた別の人に向かって刃を振るっていた。

普通なら許されざる事。
自分より身分の高い人に歯向かうなど言語道断。
解雇されてもおかしくない。

「貴様、ただの執事ではないな」

キースの剣を受けた男が、笑いながら言う。
その目は好戦的だ。
戦場に出たら、さぞかし生き生きとしながら剣を振るうだろう。

対して、キースは依然として落ち着きを払っていた。
口は真一文字に結んでいるものの、彼を見つめる目はどこか穏やかだ。

「いえ。私はただの執事です」

そして、穏やかに返す。
しかし、剣の動きに迷いはない。

その事がますます彼を腹立たせていた。